なぜ組み込みシステムにLinuxを使うのか

How toの途中ですが、ちょっと読み物を

これから組み込みシステムを開発しようと思っている方は、大きく2つの方向からのアプローチをとっていると思います。

1つは、これまで8Bitマイコンのシステムを作ってきてデーター量の増加や、扱うデバイスの複雑化などによって、より高機能なシステムを利用するためにLinuxを採用してみようというアプローチ。もう一方は、これまでデスクトップOSでシステムを組んできたが、専用機にすることによって、メンテナンス性の向上や、ユーザーの自由度を制限することによって、システムの安定性を望んでの組み込みLinuxを採用してみようというアプローチです。

どちらからのアプローチでも、システムが完成してしまえば、それなりの効果は得られるはずです。しかし、そのためには、これまで組んできたシステムでは全く考慮しなくてよかった部分を考慮する必要が出てきます。

まず、最初にマイコンからのアプローチについて検討してみましょう。

Linuxの基本は、マルチユーザー、マルチタスクのOSです。マルチユーザのOSとは、Aさんでログインしたら、Aさんの環境、BさんでログインしたらBさんの環境が準備されていることを前提としています。8Bitマイコンシステムでは、マルチユーザーを意識したものはほとんど無いと思いますので、この概念を理解して進めるかどうかによって、アプローチ方法が大きく変わります。今後、インターネットにつながって、システムとしてセキュリティを考えていかなくてなならないのであれば、マルチユーザの概念を理解しておく必要があります。

ここでは、温度センサを例に解説していきましょう。一般的な温度センサであれば8Bitマイコンで十分なのですが、一定時間毎に温度を記録してグラフを出しましょう。また、そのグラフはPCやスマートフォンなどからWebブラウザで見えるようにしましょうとなると、LinuxなどのWebサーバーが利用できるOSを採用したほうがいいことにまります。また、データーも永遠に増え続けるので、誰かが操作してバックアップするなりクリアするといったメンテナンスも必要になってきます。このあたりから、マルチユーザーの機能が必要になってきます。メンテナンスを行う権限を持ったユーザーと、見ることだけが可能なユーザーといった2種類のユーザー権限を定義したシステムを考えていく必要が出てくるといった具合です。

また、ファイルシステムいった概念も、8Bitマイコンにはなかったものです。How Toのページでルートファイルシステムをどうするかなどの解説もしてきましたが、マイコンでは、OSもアプリケーションも最終的に1つの実行形式ファイルにリンクしてROMに書き込むといったアプローチが一般的であるのに対して、Linuxでは、ファイルをコピーするコマンド、システムをシャットダウンするコマンドなど、それぞれの機能を別々のファイルとして実現しています。今後、ブートローダーの移植などの話題もこのブログで取り上げていく予定ですが、ブートローダーのプログラムなどは、8Bitマイコンのプログラムに非常に似ています。逆に、一般的に使用されているブートローダの機能を拡張するだけである程度のシステムであれば実現することも可能であるともいえます。

デスクトップOSからのアプローチはどうでしょう

デスクトップOS(Windowsや、一般的なLinuxのディストリビューション)では、システムは、エンドユーザーが使いながら進化させていくことを前提に設計されています。文章を書きたいなら、ワードプロセッサをインストール、セキュリティを向上させるために、ウィルススキャンをインストールなどして、システムの状況は日々進化していくものとして設計されています。一方、組み込みシステムでは、システムそのものの変更は基本的に行われません。工作機械に組み込んだコンピュータの能力が余ってるからといって、工作機械で、ゲームやネットサーフィンをしようとはユーザーも思わないでしょう。逆に、できるからといって、ネットサーフィンの機能などをつけたら、ウィルスなどで工作機械が誤動作でもしようものなら目も当てられません。

そのまま、工作機械を例に話を進めますが、システム設計者は、どのような機能を実現するかだけでなく、機械を組み立てる際に設定すべき項目(モーターがいくつあって、それぞれのモーターの性能、温度センサの位置とそれぞれの意味など)と、エンドユーザーが設定すべき項目(どのモーターに何ミリ径のドリルをつけるかなど)のように、だれが何を設定し、どのように操作するかを考えながら設計する必要がります。特に、設定項目については最低限、シンプルで目的を達成するためにわかりやすくすることが重要です。なんでもできるようにしてしまうと、Linuxなので表計算ソフトを入れてしまえということになりかねません。オープンソースなどのLinuxの便利なツールを最大限に生かしながら、ユーザーにはLinuxであることを意識させない設計が必要です。

Linuxは非常にパワフルなOSで、8Bitマイコンの代わりをすることもできますし、データーセンターの巨大サーバーのようなシステムを構築することができるOSです。どのような機能を追加して、どのような機能を隠蔽していくかは設計者のセンスにかかってきます。

今後、このブログで、8Bitマイコンに近い使い方や、デスクトップOS的な使い方など、様々な例をあげながら解説していく予定です。How Toの解説だけでなく、考え方やアプローチの方法なども追記していきます。

また、ぽよんテックでは、Linuxだけでなく、xxBSDや、Windows、マイコンなどの開発も行っていきますので、よろしくお願いします